飲食店を新しく構える方法として「居抜き」を選ぶ人が増えています。内装・設備がそろった状態で店舗を引き継ぐため、初期コストを抑えながら短期間で開業できるのが大きなメリットです。特に小規模飲食店の場合、自己資金や開業準備に使える時間が限られていることが多いため、居抜きは現実的で魅力的な選択肢といえるでしょう。
しかし、既存の設備を受け継ぐ分、判断ポイントも多くなります。「設備はどれだけ使えるのか」「譲渡金はどう決まるのか」といった疑問は、誰もが抱く自然な不安です。そのため、メリットとリスクを正しく理解し、冷静に店舗の価値を見極める姿勢が求められます。
.jpg)
■ 譲渡金の考え方と“価値の見極め方”
居抜きの中心にあるのが「譲渡金」という考え方です。これは端的にいえば、前オーナーが残した資産価値を引き継ぐための費用です。厨房設備、空調、客席、内装など、新品で揃えると数百万円規模になる設備をそのまま使えるため、一般的には新設コストより100〜300万円ほど安く開業できるケースもあります。
とはいえ、設備には寿命があり、劣化すれば修理や交換費用が発生します。つまり重要なのは、「今残っている設備が、どれだけの価値を持っているのか」という視点です。新品価格だけでなく、使用年数やメンテナンス履歴、稼働状況などを確認し、現実的な価値を丁寧に見積もることが開業後の安定運営につながります。
■ 内見時に必ず押さえたいチェックポイント
内見は、まるっと居抜きを成功させるうえで最も重要な工程です。とくに以下のポイントは必須チェック項目です。
- 電気 …容量不足があると厨房機器の同時使用ができない
- ガス …火力不足だとメニューの幅が限られる
- 水道・排水 …詰まり・逆流・悪臭は修繕費が高額になりがち
- 換気 …油煙が多い業態では必須の確認項目
- トイレ …店舗の印象に直結
- におい …構造的な問題がある場合、解決が難しい
.jpg)
また、店内の雰囲気や広さだけでなく、営業に支障が出る可能性がある「見えない部分」こそ慎重に見極める必要があります。
■ 外観・立地条件が売上に与える影響
どれだけ内装が整っていても、立地条件が悪ければ集客に苦戦します。看板の位置、道路からの視認性、人通り、周辺競合店などは売上に直結する要素です。
特に飲食店は「場所の力」を強く受けます。前オーナーが撤退した理由に「立地」が関わっていることもあるため、周辺環境の変化や客層の違いなど、複数の視点から店舗のポテンシャルを判断することが大切です。
.jpg)
■ 前オーナーの退店理由を必ず確認する
居抜きを検討するとき、見落としがちな重要ポイントが「前オーナーの退店理由」です。業績不振による撤退であれば、立地、メニュー、価格帯、周辺の競合状況に根本的な課題があるケースもあります。
.jpg)
一方、「引退したい」「別事業に集中する」「家庭の事情」などが理由であれば、店舗自体に大きな問題はない可能性が高いでしょう。退店理由を確認することで、同じ失敗を繰り返さず、店舗の改善点をあらかじめ知ることができます。
■ まるっと居抜きは“現物を見抜く力”が成功の鍵
まるっと居抜きは、ゼロから店を作るよりも、費用も時間も大幅に節約できる一方、実際に残された設備や立地の“地力”を見抜く必要があります。目に見える部分だけで判断せず、インフラ、設備、周辺環境、前オーナーの背景など、複合的に店舗の価値を評価することで、開業後のリスクを最小限に抑えることができます。
■まとめ【まるっと居抜きを賢く活用しよう】
まるっと居抜きは、小さな飲食店にとって非常に有効な開業手段です。初期コストが抑えられ、スピーディーに営業を開始できるメリットがあります。しかしその一方で、設備の状態、立地、周辺環境、退店理由など、多面的な情報を丁寧に見極める姿勢が欠かせません。
冷静に条件を見定めることができれば、まるっと居抜きは理想的なスタートを切るための力強い選択肢となるでしょう。
▶ ご相談・お問い合わせはこちら