お店を承継するということ

お店を承継するということ

「独立してお店を持つ」というと、いちから店舗を構え、資金を投じてスタートするということが常識でした。しかし今、独立開業にもさまざまな方法がふえております。そのひとつとして「まるっと居抜き」があります。

これは個人経営店の事業を、まるごと買い取って自分のお店として引き継ぐというものです。いわば「既存店舗を引き継いで自分の店にする」M&A風な出店スタイルです。

■後継者不足が生んだ新しいチャンス

現在、ニュースや新聞などでも頻繁に取り上げられているように、いま日本では空前のM&Aブームが起きています。その背景には、経営者の高齢化と後継者不足という社会的な課題があります。

ただし、一般的に「M&A」と聞くと、一定の売上や規模を持つ法人企業同士の事業譲渡をイメージする人が多いかもしれません。しかし実際には、長年地域に愛されてきた喫茶店や美容室などの個人商店が、後継者不在のまま惜しまれつつ閉店していくケースが増えています。

新聞などではあまり報じられない小規模なお店であっても、地域の人々の暮らしにとって欠かせない存在であることは少なくありません。だからこそ、こうした「町の大切なお店」を未来につなぐためにも、M&A的な発想による“承継”の仕組みが必要とされています。

一方で、起業を志す若者やセカンドキャリアを模索する人にとっては、ゼロから始めるよりも、すでに顧客基盤や設備を持つ店を引き継ぐほうがリスクを抑えられます。

この「引き継ぎたい人」と「譲りたい人」のニーズが結びつくことで、「まるっと居抜き」は地域経済を支える新しいビジネスモデルとしての可能性を提供できるのです。

■一般のM&Aとの違いとは?

一般的なM&Aが企業規模での合併・買収を意味するのに対し、「まるっと居抜き」はより小規模で、個人が実現可能な範囲の事業譲渡を『居抜き譲渡取引の延長』として提供します。

対象となるのは、たとえば個人オーナーが営む小料理屋などの飲食店などです。金額的にも数十万円から数千万円程度となっています。

■お店を承継する2つの方法

「まるっと居抜き」を行うとすると、二つの方法にわかれます。

居抜き譲渡:店舗の内装や厨房設備などのみの承継となる、いわゆる通常の居抜き譲渡取引です。

まるっと居抜き:内装や厨房設備などに付随して、店名、レシピ、仕入先、運営手法ノウハウなども譲渡対象とします。

■無理のない独立を叶える実践的な選択肢

店舗をゼロから立ち上げるとなれば、物件探しから内装工事、集客、スタッフ教育まで、膨大な時間と資金が必要です。

しかし、営業実績があり、常連客がついている店舗を引き継げば、開業初期の不安定な時期を大幅に短縮できます。これにより、起業リスクを抑えつつ、自分の経営方針を反映させたお店づくりを早い段階で実現できます。

■“地域になくてはならない店”を手に入れるという発想

「まるっと居抜き」は「自分の理想に近いお店を手に入れる手段」としても注目されています。

たとえば、長年カフェを経営してきたオーナーが引退を考えている一方で、「いつか自分のカフェを持ちたい」と夢見ていた人がいる。

この二人が出会うことで、店の雰囲気や味、地域とのつながりといった“目に見えない資産”までも引き継ぐことができます。単なる経営権の移転ではなく、想いと歴史のバトンを渡す行為──それが「まるっと居抜き」の本質です。

■拡大志向の経営者にも有効な手段

「まるっと居抜き」は独立志向の人だけでなく、すでに店舗を持つオーナーにも有効な戦略です。

ゼロから新規出店するよりも、すでに軌道に乗った店舗を買い取るほうが効率的で、結果として多店舗展開のスピードを上げられます。

■まとめ──夢と現実をつなぐ新しい起業スタイル

「まるっと居抜き」は、「夢」と「現実」を両立させる新しい独立・開業の形です。独立志向のある人、スピード感を求める人、地域に根ざしたビジネスを継ぎたい人など、それぞれの目的に応じて柔軟に活用できる仕組みとして、需要が伸びています。

■次回予告

次回は、「まるっと居抜き」の具体的なメリット──「コスト削減」「開業期間の短縮」「資産の継承」──について、より実践的な視点から詳しく解説します。お楽しみに。

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